【安全管理の死角】なぜベトナムの現場で転落事故はなくならないのか?心理的要因と「慣れ」の恐怖

はじめに

「気をつけて作業しなさい」。朝礼で何度そう伝えても、なぜか現場からヒヤリハットはなくなりません。ベトナムの建設・製造現場における労働災害、特に高所からの「転落」は、長年にわたり死亡事故原因のトップを占め続けています。

多くの現場管理者は、これを「作業員の不注意」や「安全意識の欠如」と片付けがちです。しかし、ベトナム人の熟練工がなぜ基本的なルールを破ってしまうのか、その心理的メカニズムを深く理解しなければ、悲劇は繰り返されるばかりです。

本記事では、精神論や罰則だけでは防げない「人間の心理的エラー」に焦点を当てます。そして、ハセガワの「乗ればわかる、頼もしさ」という製造哲学が、いかにして作業員の心理的負担を取り除き、結果として事故を未然に防ぐ物理的な防波堤となり得るのか、データと理論に基づいて解説します。

課題と背景:現場に潜む「見えない」リスク

市場データ:数字で見る転落事故の深刻さ

ベトナムにおける建設現場の現実は、統計データを見るとより鮮明になります。MOLISA(労働傷病兵社会省)の報告に基づく研究によると、2014年から2022年の間に発生した建設業の死亡事故のうち、実に60.4%が「高所からの転落」によるものでした。

また、2024年のデータでも、労働災害による死亡事故の原因として建設業は依然として高い割合を占めており、その原因の約20%は労働者自身の行動(安全手順の違反や保護具の不使用)に起因しています。これは、設備上の不備だけでなく、人間の行動特性が事故の大きな要因であることを示唆しています。

リスク提示:ベトナム特有の環境要因

ベトナムの現場には、日本とは異なる特有のリスク要因があります。高温多湿な気候は集中力を低下させ、急速な都市開発に伴う厳しい工期は、作業員に「焦り」を生じさせます。このような環境下では、わずかな心理的油断が命取りとなります。

なぜベトナムの熟練工ほど危ないのか?(心理的要因)

恐怖のメカニズム「正常性バイアス」と「慣れ」

「自分だけは大丈夫だ」。誰もが心のどこかでそう思っています。これを心理学で「正常性バイアス」と呼びます。特にベトナムの熟練工は、長年の経験から高所作業に「慣れ」が生じています。この慣れこそが、恐怖心を麻痺させ、本来必要な安全確認を「無駄な作業」と感じさせてしまうのです。

省略本能と「近道行動」

人間には、手間を省こうとする「省略本能」があります。「脚立を動かすのが面倒だから、身を乗り出して作業しよう」「ハーネスを付ける時間が惜しい」。こうした「近道行動(ショートカット)」は、重くて扱いにくい道具を使っている現場ほど発生しやすくなります。つまり、道具の使い勝手が悪いことが、間接的に作業員の不安全行動を誘発しているのです。

Hasegawaが提案するソリューション:心理的ミスをハードで防ぐ

精神論で人間の本能に抗うことには限界があります。だからこそ、ハセガワは「道具(ハードウェア)」の力で心理的エラーを防ぐアプローチをとっています。

「乗ればわかる、頼もしさ。」:恐怖による焦りを消す

高所で脚立がグラついたとき、人は本能的に恐怖を感じ、身体が硬直します。このストレスが疲労を招き、注意力を散漫にさせます。 Hasegawa Vietnamの製品は、JISやSGといった規格試験に合格するだけでなく、実際に人が乗って検証する「官能評価」を徹底しています。数値化できない「揺れ」や「たわみ」を徹底的に排除することで、作業員は足元への不安を忘れ、作業に集中できます。「揺れない」ことは、単なる快適さではなく、心理的な安全装置なのです。

「脚軽(Ashigaru)」:移動の「面倒」を消す

「重い脚立を運ぶのが面倒」という心理が、無理な体勢での作業(不安全行動)を引き起こします。 ハセガワの「脚軽(Ashigaru)」シリーズは、その名の通り革新的な軽さを実現しています。片手で軽々と持ち運べるため、作業員は億劫がらずに適切な位置へ脚立を移動させるようになります。「軽さ」が、結果として安全ルールを守る行動を促進するのです。

「脚部伸縮(Shagaman)」:不安定な足場をなくす

ベトナムの建設現場は、地面が平らでないことが多々あります。ブロックなどを挟んで無理やりバランスを取る行為は極めて危険です。 「脚部伸縮(Shagaman)」シリーズは、立ったまま伸縮操作ができる「ワンタッチバー」を備え、段差や傾斜地でも確実に水平を保ちます。これにより、不安定な設置を根本から防ぎます。

ハセガワの信頼性:数値化できない「安心」の裏付け

グローバル基準の品質管理

Hasegawa Vietnamのダナン工場は、単なる海外生産拠点ではありません。日本、アメリカ、香港といった最も品質に厳しい市場へ製品を供給する、グローバルサプライチェーンの中核です。 ここでは、日本と同様の厳格な品質管理が行われています。たとえば「タフシリーズ」では、10万回(週5日、1日100回の昇降を想定)を超える耐久試験を実施しています。ベトナムで製造された製品が、世界中のプロフェッショナルに選ばれている事実が、その品質の証です。

ベトナム国内サポートの強み

輸入品の多くは、部品交換やメンテナンスに時間がかかります。しかし、Hasegawa Vietnamはダナンに工場を持つため、迅速なサポートが可能です。長く安全に使い続けるための体制が整っていることも、現場管理者にとって大きな安心材料となります。

まとめ

転落事故の原因の多くは、作業員の「心」の中に潜む「慣れ」や「油断」です。しかし、これを個人の責任に帰すだけでは事故はなくなりません。

重要なのは、「人間はミスをする生き物である」という前提に立ち、ミスを誘発させない環境と道具を用意することです。

  • 揺れない脚立で、恐怖と焦りを取り除く。
  • 軽い脚立で、移動の手間(サボり心)を取り除く。
  • 調整できる脚立で、不安定な設置を取り除く。

ハセガワの製品を選ぶことは、単に道具を買うことではありません。それは、現場から「心理的な事故要因」を排除し、作業員の命と企業の信頼を守るための「安全への投資」なのです。