はじめに
電気設備の保守や照明・空調の点検など、屋内での高所作業には梯子(はしご)と脚立が欠かせません。とりわけ活線部が近いビル内の電気工事では、金属梯子を使ったことで発生する感電事故が依然として課題です。本稿では、電気工事とメンテナンスを担う設備業者向けに、感電リスクを低減するFRP(繊維強化プラスチック)梯子の選び方を、一次データと具体的な製品例を交えながら解説します。
電気工事向け市場データ
国内オンライン工具専門店モノタロウの販売動向によると、梯子カテゴリの上位 20 製品中およそ 70 % がアルミ製梯子であり、軽量さを理由に現在も主流を占めています(モノタロウ 2 連はしご一覧)。しかし、感電対策の需要が高まるにつれ、FRP梯子の販売比率は過去 5 年で約 1.6 倍に拡大しました。
たとえば長谷川工業の「FRP1 連梯子」は耐電圧 20 kV、ピカコーポレーションの「FRP‑SL シリーズ」は35 kVまで対応し、電柱作業にも活用されています。いずれも ISO 14122‑4 の安全要件を満たす構造で、屋内外を問わず感電リスクを大幅に抑えられます。
Data Box|電気工事用梯子の主要指標
| 指標 | 数値 | 出典 |
|---|---|---|
| アルミ梯子の市場シェア | 70 % | モノタロウ一覧 |
| FRP梯子の耐電圧範囲 | 20–35 kV | モノタロウ/ピカ |
| 梯子事故に占める墜落・転落 | 30.4 % | 厚労省 建設業災害速報 |
| 感電死亡が占める割合 | 50 %超 | JNIOSH 感電統計 |
| FRP梯子 3 m クラス平均価格 | 約 2.8 万円 | 楽天市場価格調査 |
梯子事故リスクと安全基準
梯子関連の労働災害を分析すると、墜落・転落が全体の 30 % 以上を占め、その原因として脚端具の滑りや伸縮機構の誤操作が挙げられます。また、金属梯子が活線部に触れて発生する感電事故は死亡災害の半数を超えており、電気工事では特に深刻です。
こうした背景から、日本産業規格 JIS S 1121:2013 では耐荷重 130 kg クラスの強度と、滑り止め端具の摩擦係数 0.4 以上を義務付けています。さらに安全認証の SG マークや製品に表示される耐電圧値を確認することで、感電と転落の双方に備えられます。
FRP梯子が選ばれる4つの理由
1. 非導電で高い耐電圧性能
FRP はガラス繊維を樹脂で固めた非導電素材です。長谷川「FRP1 連梯子」が 20 kV、ピカ「FRP‑SL」は 35 kV と、いずれも屋内の配電盤作業を十分にカバーする耐電圧を実現しています。
2. 軽量で持ち運びが容易
全長約 3 m の FRP梯子でも質量は 10 kg 前後とアルミ製に匹敵する軽さです。2 連・3 連タイプなら収納時は約 2 m 以下になり、ライトバンへの積載やエレベーター搬入もスムーズです。
3. すぐれた滑り止め構造
75° の設置角で踏面が水平になる楕円ステップと、大型ゴム端具が標準装備されています。これにより、コンクリートやタイルなど床材が異なる屋内環境でも安定した作業が可能です。
4. 余裕の耐荷重 130 kg
最新の業務用モデルは最大使用質量 130 kg に対応し、作業者の体重に工具や部材を加えても安全率を確保。ビルメンテナンスのように装備が多い現場でも安心して使用できます。
ハセガワの信頼性とベトナム向けサポート
長谷川工業は 2002 年に ISO 9001 を取得し、現在は国内外 4 工場で月 250 回を超える強度・耐電圧試験を継続しています。出荷時にはすべての梯子を対象に 20 kV の耐電圧テストを実施し、規格値を満たさない製品は市場に流通しません。
ベトナム・ダナン工場を含む海外拠点では、高さや幅、脚端具をミリ単位でカスタムできる体制を整えています。さらに現地法人がベトナム語マニュアルや年次点検サービスを提供し、部品を即納できるため、導入後の稼働停止リスクを最小限に抑えられます。
まとめ
屋内の電気工事やメンテナンスで安全と効率を両立するには、非導電性・滑り止め性能・携行性を兼ね備えた FRP梯子が最適です。JIS と ISO に準拠したハセガワの製品は、20–35 kV の耐電圧と 130 kg クラスの強度を確保しつつ、軽量で取り回しにも優れています。ベトナム市場でもカスタム対応と迅速なアフターサービスが受けられるため、感電ゼロと転落防止の両面で確かな効果が期待できます。
安全は投資から――今こそ FRP梯子にアップグレードし、感電リスクを根本から排除しましょう。