はじめに
ベトナムは、東南アジアでも有数の経済成長国として注目を集めています。人口約1億人のうち、平均年齢は30代前半と若く、教育水準もOECDのPISAランキングで世界上位に位置するなど、将来性の高い市場といえるでしょう。
本記事では、これからベトナム市場への新規進出や再展開を検討している日本の中堅・中小企業の皆さまを主な読者層と想定しています。特に、製造業・サービス業を問わず、現地の需要を取り込みながら長期的にビジネスを展開したい企業にとって、ベトナムのビジネス環境を理解することは不可欠です。
魅力的な成長市場である一方で、法制度の未整備、行政手続きの煩雑さ、現地調達の課題、人材確保の困難さなど、進出にあたって注意すべき点も少なくありません。また、競合相手には地場企業のみならず、中国・韓国・欧米系の企業も含まれ、価格競争力だけでは差別化が難しい状況です。
本稿では、こうした環境の全体像を俯瞰しながら、日系企業がシェアを伸ばす背景や直面する課題、それに対する具体的な戦略・対応策について、事例を交えて解説していきます。
課題と背景
市場データ
ベトナムは2010年以降、平均約7%のGDP成長率を維持しており、現在も高い成長ポテンシャルを有する国です。人口は約1億人に達し、平均年齢は30代前半、識字率も95%以上という教育水準の高さがビジネス基盤を支えています。OECDのPISA学力調査では世界8位を記録しており、ASEAN諸国と比較しても際立つ教育優位性がうかがえます。
また、日系・中国系企業を中心に、生産拠点のベトナム移転が顕著に進んでいます。特に米中貿易摩擦を契機として、日本からの生産移管は2019~2024年の間に106件、中国からの移管では半数以上がベトナムを選択しています。
ベトナムに進出している日系企業の業績も良好で、2024年には64.1%が黒字を確保。事業拡大を意欲的に検討する企業の割合も56.1%に上り、ASEAN諸国の中でも高水準です。特に非製造業における黒字化の進展は、販売・サービス分野の将来性を示唆しています。
リスク提示
法制度と行政手続き
ベトナムの事業環境における大きな課題は、法制度の未整備および行政手続きの煩雑さです。企業が投資許可や駐在員の労働許可を取得する際、非公式な手数料の要求や、曖昧な規制運用に悩まされる事例が少なくありません。
労務・インフラ面の制約
人件費の上昇と電力供給の不安定さも深刻なリスク要因です。特に北部地域では外資の進出に伴い人材獲得競争が激化しており、昇給圧力や採用難に対応する柔軟な体制構築が求められています。
競争の激化
国内市場では、中国・韓国・地場企業による価格競争が強まっています。とりわけ中国企業は、「ジャパンブランド」を冠した商品で攻勢をかけており、見かけ上の品質や起源によって消費者を引き寄せる戦略も目立ちます。こうした中で日系企業は、本物の品質と信頼性を訴求する必要があります。
製品・サービス紹介
特長
ベトナムの消費者は、品質と安全性に高い意識を持つ一方で、価格にも敏感です。日本企業の製品は「信頼性」「長寿命」「安心感」といった観点から好意的に受け止められており、とりわけ「ジャパンブランド」に対するイメージは非常に良好です。
その一方で、模倣品や日本風ブランド名を冠した製品も出回っており、ブランドイメージが利用されるケースも見られます。これはジャパンブランドの認知度と影響力の高さを示しているといえるでしょう。
また、スマートシティ構想の進展、教育投資の拡大、そして急成長するEC市場は、IT・教育・物流・通信・決済分野など多くの業種にとって新たなビジネスチャンスを提供しています。特にスマートフォンの普及率が高いため、SNSやECモールを活用したプロモーション戦略は極めて重要です。
導入事例(Before → Action → After)
- J社(内需型・小売):日用品を扱う日系小売企業。参入当初は地場・中国製品との価格競争に苦しんだが、「日本品質」「衛生・安全性」を前面に押し出した販促施策を展開。POP広告やSNSを通じた認知向上により、購買単価とリピート率を高めることに成功。
- K社(耐久消費財):周辺国で製造した日本ブランド家電をベトナムで販売。現地生産は行わず、輸入販売に特化。SNSマーケティングで「丁寧なモノづくり」「環境配慮設計」などの価値を訴求し、若年層の関心を引きつける。ブランドの再構築と顧客層の拡大を実現。
ハセガワの信頼性
品質管理・認証
ハセガワは創業以来、安全性と品質を最優先に製品開発を行ってきました。ベトナム市場においても、ISO9001やJIS(日本産業規格)など国際的な品質基準に準拠した製造・管理体制を整備し、「安心して使える製品」として高い評価を得ています。
また、現場での実使用に基づいた検証を重ねることで、単なる数値管理ではなく「現場主義」に基づいた品質保証を実現しています。これは、日本国内で培った安全基準を、ベトナムでも一切妥協せずに適用していることを意味します。
特注対応・サポート体制
多様な業種が進出するベトナムでは、現場ごとに求められる仕様や機能が大きく異なります。ハセガワでは、現地ニーズに基づいた特注設計や仕様変更に柔軟に対応。建設現場や物流倉庫といった高所作業の現場では、事前ヒアリングにより作業条件や人員配置まで踏まえた提案を実施しています。
さらに、現地パートナー企業との連携により、アフターサービスや修理体制も万全。納期や輸送も含め、迅速かつ丁寧な対応を通じて信頼構築に努めています。
データボックス
| 指標項目 | 数値・内容 |
|---|---|
| 人口 | 約1億人(2024年現在) |
| 平均年齢 | 約32歳 |
| 識字率 | 約95%以上 |
| 日系企業の黒字率(2024年) | 64.1% |
| 事業拡大意欲(日系企業) | 56.1%(ASEAN中トップ) |
まとめ(要点/CTA/関連リンク)
ベトナム市場は、成長性・人口構成・教育水準といった多様な魅力を備えた市場である一方で、法制度やインフラ、人材、競争環境など克服すべき課題も抱えています。こうした二面性を正しく理解し、日本企業としての強みを的確に活かすことが求められます。
本記事を通じて、ベトナムビジネスの全体像を把握し、貴社が今後どのように現地市場に展開していけるか、その戦略設計の一助になれば幸いです。特に、ジャパンブランドの価値を真摯に伝える姿勢、現地対応力の強化、そしてローカルパートナーとの連携強化が、今後の成功に欠かせない鍵となるでしょう。
▶ ご相談・資料請求をご希望の方は、ハセガワ・ベトナム現地法人窓口までお気軽にお問い合わせください。
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