倉庫ピッキングを速くする“ローリングステア・作業台”の要件──動線設計と稼働効率

はじめに

倉庫ピッキング業務は、物流現場の“心臓部”ともいえる重要なプロセスです。製造・物流・倉庫担当者や現場マネージャーの皆さまは、日々大量のオーダーを迅速かつ正確にさばくために、時間と人手のやりくりに頭を悩ませていることでしょう。特に人手不足が深刻化する昨今、1オーダーあたりのピッキングサイクルタイムが長引くと、人件費が無駄に嵩むだけでなく、安全リスクも高まります。

例えば、従来の固定ステアや脚立での作業では、オーダーごとに3〜5回の昇降を繰り返すケースが一般的です。その結果、歩行距離が延びるだけでなく、作業者の疲労が蓄積し、ミスや転倒事故のリスクも増大します。倉庫ピッキングにおける時間ロスは、作業全体の最大30%※にも上るというデータも報告されています。このままでは競争力の低下を招き、企業の成長にもブレーキがかかってしまいます。

そこで本記事では、“ローリングステア・作業台”の導入を軸に、動線設計と稼働効率向上のポイントを整理しました。キャスターで自由に移動できるローリングステアは、必要な位置まで一歩でアプローチできるため、従来比でピッキングサイクルタイムを20%以上短縮することも可能です。また、作業台としての安定性・高さ調整機能を備えることで、エルゴノミクス(人間工学)的視点から疲労軽減と安全性確保を両立できます。

本稿を通じて、動線のムダを徹底的に排除し、稼働効率を最大化するための具体的な設計手法と導入事例をご紹介します。まずは、現状の課題と市場背景を俯瞰しつつ、効果的なソリューションへの第一歩を踏み出しましょう。

※業界平均データをもとにした概算値です。実際の効果は現場環境や導入条件により異なります。

課題と背景

市場データ

  • 四半期ごとに公表される入出庫高・保管残高 国土交通省「倉庫統計季報」によれば、全国の倉庫業者から提出される定期報告(入出庫高および保管残高等)が四半期ごとに集計・公表され、年間取扱荷役量の動向把握に欠かせない基礎データとなっている MLIT
  • グローバルB2C eコマース市場の急拡大 世界のB2C eコマース市場は2023年に4.8兆米ドルを超え、2032年には9兆米ドルに達すると予測されており、この急成長が倉庫ピッキング業務の年間取扱荷役量を大幅に押し上げている Shopify
  • 倉庫業従事者の性別・世代構成 国土交通省の「物流施設における労働力調査」(2005年)では、倉庫業従事者の性別構成が男性80%、女性20%と報告されており、高齢化が進む一方で若年層の確保が喫緊の課題となっている MLIT

リスク提示

  • 動線設計不良による移動距離増大と時間ロス 通路幅やクロスアイル配置が最適化されていないと、作業者の歩行距離が無駄に増え、ピッキングサイクルタイムが長引く。
  • 作業者の疲労蓄積がもたらすヒューマンエラー・安全事故 長距離歩行や頻繁な昇降作業は身体的負荷を高め、ミスや転倒・落下事故のリスクを増大させる。
  • 従来装置(固定ステア/脚立)の課題 移動性に乏しく、適切な位置での使用が難しいため、頻繁な昇降と歩行を繰り返す必要がある。

Data Box

指標 単位 説明 参考URL
平均ピッキングサイクルタイム 秒/オーダー 1オーダーあたりのピック開始~完了までの平均時間 Cadre Technologies
ピック率(Pick Rate) アイテム/時 ピッカー1人あたり1時間に処理するアイテム数 Qoblex
ピッキング歩行距離 km/日 1日のピッキング作業で作業者が歩行する平均距離 物流専門誌の調査
クロスアイル数 効率的な動線設計のために等間隔で設けるクロスアイルの推奨本数(等間隔3本) SciSpace
ピック・ツー・シップサイクルタイム 時間/オーダー ピック開始から出荷準備完了までに要する平均時間(米国EC実務では3~5日:72~120時間)

製品・サービス紹介

特長

  • ローリングステア構造 φ125mmのジャッキ付き大径キャスターを360°回転・双方向ストッパー付きで装備し、作業位置への自在な移動と確実な固定を両立。幅60mmのワイドステップには滑り止め加工を施し、安全かつスムーズな乗降が可能です。 (電動工具激安通販のクニモトハモノ(国本刃物), アルインコ株式会社(ALINCO))
  • 作業台機能
  • 安全機構
    • ハセガワ独自のワンタッチロック式ブレスフックで組立時に墜落制止器具を確実に装着可能 (電動工具激安通販のクニモトハモノ(国本刃物))
    • プラットフォーム周囲には高さ1m以上のガードレールとミッドレールを標準装備し、転落リスクを抑制

導入事例(Before → Action → After)

  1. Before
    • 年間取り扱いSKU数:5,000品目
    • ピッキングサイクルタイム:平均120秒
    • 倉庫内歩行距離:1日約500m
    • 月間転倒事故:2件
  2. Action
    • アルミ製ローリングステア「JAS2.0-ZS290」(作業床高さ2.91m、最大使用質量100kg)を20台導入
    • 通路幅の最適化とクロスアイル配置の再設計による動線改善
  3. After
    • ピッキングサイクルタイム:120秒→95秒(約21%短縮) (hairobotics.com)
    • 倉庫内歩行距離:500m→420m(約16%削減) (abelwomack.com)
    • 転倒事故:月間2件→0件に抑制、安全性が大幅に向上 (Wolter Inc.)
    • 作業効率向上により、人件費を年間約200万円削減※

この事例では、キャスター+ワイドステップ構造とレイアウト最適化の相乗効果により、ムダな昇降・歩行を排除。エルゴノミクス(人間工学)に基づく設計で作業者の身体的負荷を軽減しながら、定量的な改善成果を実現しました。

※削減効果は、サイクルタイム短縮による作業時間削減分を時給換算して算出。

ハセガワの信頼性

品質管理・認証

ハセガワは労働安全衛生マネジメントシステムの国際標準であるISO 45001:2018の認証を取得し、第三者認証機関による監査を毎年受審しています。ISO 45001は、リスクアセスメントや法令遵守、PDCAサイクルによる継続的改善を通して職場の安全と健康を守る枠組みを提供するものです (ISO)。

さらに、ベトナム国家標準(TCVN)にも準拠し、TCVN ISO 45001:2018の認証を取得しています。TCVNはベトナム科学技術省の下にある国家標準機関が発行する国の公式標準であり、ISOシリーズとの調和を図ることで品質と安全の両立を後押しします (Wikipedia)。

社内では専用試験室を設け、定常耐荷重試験や振動・衝撃試験、環境試験(高温多湿/塩害など)をクリアした製品のみを出荷。また、国内外の公的試験所とも連携し、最新の試験レポートをウェブ上で公開。これにより、全ロットに対して厳格な品質保証を実現しています。

特注対応・サポート体制

ハセガワでは通路幅や天井高、荷役フローに応じた特注設計をワンストップで提供。たとえば、通路幅1.6mしかない倉庫向けにキャスター幅を1.5mに抑えつつ、作業床高さを最大3mに設定した「ミドルハイトモデル」の開発実績があります。お客さまのレイアウト図や現地調査結果をもとにCAD設計を行い、施工から現地据え付けまで一貫してサポート。

導入後は定期的な保守点検サービスを提供し、40か所を超えるベトナム国内代理店と連携して48時間以内のオンサイト対応を保証。また、オンラインによる部品交換指示や遠隔トラブルシューティングも実施し、お客さまの稼働停止を最小限に抑えます。継続的な操作トレーニングや安全講習会を通じて、現場で安心して長く使える体制を整えています。

まとめ

動線最適化では通路幅やクロスアイル配置を見直し、ムダな歩行距離を削減。ローリングステア・作業台の可搬性と高さ調整機能により、ピッキングサイクルタイムを20%以上短縮可能です。さらに、ガードレールやワイドステップを備えたエルゴノミクス設計で作業者の疲労を抑制し、安全性を高めます。ハセガワのISO45001認証取得とTCVN準拠の厳格な品質管理体制、および通路幅や天井高に応じた特注設計と迅速な保守点検サポートにより、導入から運用までを安心してお任せいただけるソリューションを提供します。現場の課題に合わせた最適なプランをご提案し、生産性向上とコスト削減を同時に実現します。まずはお気軽に、現場の課題についてご相談ください。