はしご・脚立の品質管理:海外製造拠点で押さえるべき基準と工程

はじめに

海外製造拠点で生産されるはしごや脚立は、コストや供給面での利点がある一方、品質や安全性の確保という課題も抱えています。国内外の事故統計(NITEによると2006〜2010年度で189件)を見ると、誤使用や不注意による転落・負傷が多数を占めており、現場での安全性を守るためには製品段階からの徹底した管理が欠かせません。本記事では、「はしご・脚立 品質管理 基準」という観点から、海外製造で押さえるべきポイントや基準、工程管理の重要性を具体的に解説します。

事故発生の実態と背景

NITE(製品評価技術基盤機構)の統計によると、2006〜2010年度の5年間に、はしごや脚立に関連する事故は計189件発生し、そのうち死亡事故が11件、重傷事故が72件、軽傷事故が97件にのぼります。主な事故原因は、作業中にバランスを崩しての転落、昇降時の転落、不安定な場所への設置などで、特に「誤使用や不注意」が原因とされるケースが64%を占めています。これらの事実は、設計・製造段階での安全性確保に加え、現場での正しい使用方法の周知と教育が不可欠であることを示しています。

出典: 製品評価技術基盤機構(NITE) 製品安全センター

国際・国内の品質基準と認証制度

はしごや脚立の安全性と品質を保証するためには、国際・国内の規格や認証制度の理解と遵守が不可欠です。代表的なものとして、工業標準化法に基づき登録認証機関が製品試験と品質管理体制を審査する「JISマーク(JIS S1121等)」があります。これは互換性や安全性の確保に寄与し、公共調達にも有効です。次に、製品安全協会が定めた基準に適合し、欠陥による人身事故時には救済制度が適用される「SGマーク(CPSA基準)」があります。さらに、軽金属製品協会はしご脚立部会が定めた自主基準に基づき、JISやSGよりも広い適用範囲を持つ「Aマーク」があり、製品の試験結果を審査した上で付与されます。これらの認証マークは対象製品や適用範囲、安全保証内容が異なり、選定時の重要な判断材料となります。

海外製造拠点での品質管理プロセス

海外製造において品質を確保するためには、製品ライフサイクル全体にわたる管理体制が求められます。まず材料調達段階では、アルミ合金の規格適合や耐食性を確認し、ロットごとの品質証明書を取得します。次に製造工程では、寸法精度や溶接品質、表面処理の仕上がりなど重要な工程ごとに品質ゲートを設け、基準外製品を流出させない仕組みを構築します。さらに、完成品に対しては荷重試験・耐久試験・開閉動作試験を実施し、規定の性能を満たすかを検証します。最後に、出荷前の最終検査で外観・機能・安全表示の確認を行い、ロット管理によってトレーサビリティを確保することで、万一の不具合時にも迅速な対応が可能となります。

出典: JISマーク表示制度(日本産業標準調査会)

安全性を高める設計・製造上のポイント

製品の安全性を高めるためには、設計段階から耐久性と安定性を考慮することが欠かせません。例えば、天板構造とロック機構は、繰り返し使用による摩耗や衝撃にも耐えられる強度を確保する必要があります。また、滑り止め加工は支柱や踏ざん部分に適切に施し、作業者の足元の安定性を高めます。海外製造では、支柱の亀裂や金具破断といった不具合事例も報告されており、これらは材料選定や加工精度、検査工程を強化することで防止できます。さらに、設計・製造の各段階で高所作業安全規則など関連法令を遵守し、現場での安全確保と法的リスク回避の両立を図ることが重要です。

出典: 厚生労働省 高所作業に関する安全衛生規則

現場での運用・教育とフィードバック

現場での安全運用を徹底するには、製品の使い方を誰でも理解できるようにする工夫が欠かせません。使用マニュアルは現地言語を含めた多言語化を行い、文化や慣習の異なる作業者にも分かりやすい内容とします。また、誤使用を防ぐために、文章だけでなく直感的に理解できるピクトグラム表示を採用し、重要な注意点を視覚的に示します。さらに、現場で発生した事故やヒヤリハット事例を体系的に収集・分析し、改善サイクルを回すことで、潜在的なリスクを低減できます。これらの情報は海外製造拠点にも迅速に共有し、設計や製造工程の改善に反映するフィードバックループを構築することで、グローバルに安全性を高めることが可能です。

まとめ

海外製造拠点でのはしご・脚立の安全性と品質を守るには、まず国際・国内で定められた品質基準を遵守し、製造工程を厳格に管理することが事故防止の基本となります。また、JISやSG、Aマークといった認証マークを取得することで、製品の信頼性と市場での競争力を高められます。さらに、現場での教育体制、日常的な運用管理、そして改善サイクルの継続的な実施により、長期的かつ持続可能な安全性の確保が可能になります。