はじめに
ベトナムの製造・建設現場において、日々使用される脚立やはしご。本体の歪みや破損には注意を払っていても、「足元」の状態まで細かくチェックできている現場はどれほどあるでしょうか。
脚立の最下部に取り付けられている「滑り止めラバー(正式名称:脚端具/きゃくたんぐ)」は、自動車で言えば「タイヤ」や「ブレーキパッド」にあたる極めて重要な保安部品です。どれほど堅牢なアルミ脚立であっても、地面と接するこの数センチメートルのゴムが機能を失っていれば、転倒や転落といった重大な労働災害に直結します。
特に高温多湿で、工場によっては油分や粉塵が多いベトナムの環境下では、日本国内よりもゴムの劣化スピードが速い傾向にあります。「まだ使えるだろう」という過信が、取り返しのつかない事故を招く前に。本記事では、プロの視点から脚端具の交換基準、劣化のメカニズム、そしてハセガワベトナムが提案するメンテナンスの重要性について解説します。
なぜ「脚端具」の管理が重要なのか
労働災害データの現実と「滑り」の恐怖
労働災害において、墜落・転落事故は常に高い割合を占めています。日本の厚生労働省が発表している労働災害統計(2022年版)によると、建設業における死亡災害の約40%が墜落・転落によるものです。また、ベトナム労働・傷病兵・社会省(MOLISA)のレポートでも、建設・製造現場での高所作業リスクは依然として最大の課題とされています。
脚立やはしごに関連する事故の原因を分析すると、大きく分けて「バランス崩し」「踏み外し」、そして「脚立自体の滑り(スリップ)」が挙げられます。特にハシゴを使用する場合、設置角度が75度から崩れる原因の多くは、床面との摩擦力不足、つまり脚端具の摩耗や劣化に起因します。
新品の脚端具は、JIS規格(JIS S 1121など)に基づいた摩擦係数を確保するように設計されていますが、使用に伴いその性能は確実に低下します。摩耗してツルツルになったゴム底は、濡れたエポキシ床や、切削油が飛散したコンクリート上では、あたかも氷の上のような状態となり、作業者を支えることができなくなります。
ベトナム環境特有のリスク:劣化を早める要因
ベトナムで活動する皆様に特に認識していただきたいのが、「環境によるゴムの劣化(加水分解・硬化)」です。
- 高温多湿による加水分解ベトナムの平均湿度は年間を通じて80%前後、雨季には90%を超えることも珍しくありません。ゴムや樹脂製品は水分と反応して化学分解を起こす「加水分解」のリスクが高まります。これにより、ゴムがボロボロと崩れたり、粘着きが出たりすることがあります。
- 紫外線(UV)によるクラック屋外作業で使用される場合、ベトナムの強力な紫外線はゴムの主鎖を切断し、表面に「クラック(ひび割れ)」を発生させます。ひび割れたゴムは柔軟性を失い、床面の微細な凹凸に食い込む力が弱まるため、グリップ力が著しく低下します。
- 工場床の油分と化学薬品加工工場などで床に油分が含まれている場合、一般的なゴムは油を吸収して膨潤(ぼうじゅん)し、強度が低下したり変形したりします。ハセガワ製品は耐油性に配慮した素材を使用していますが、それでも限界を超えた使用は危険です。
危険サインを見逃すな!交換のタイミングと点検法
では、具体的に「いつ」交換すべきなのでしょうか。現場の誰もが判断できる明確な基準を設けることが、安全管理の第一歩です。
即交換が必要な3つのサイン
以下のいずれか一つでも該当する場合、その脚立の使用を直ちに中止し、脚端具を交換してください。
- 【摩耗】底面の溝(スリップサイン)が消失している自動車のタイヤと同様、脚端具の底面には滑り止めのための「溝」が刻まれています。新品時には数ミリメートルの深さがあるこの溝が摩耗し、平ら(ツルツル)になっている場合は寿命です。溝がなくなると、水や油の膜を排除する「排水効果」が失われ、ハイドロプレーニング現象のように滑りやすくなります。
- 基準値: 溝の深さが1mm以下になったら交換推奨。
- 【硬化・破損】ひび割れや欠けがあるゴムを爪で押しても弾力がなく硬い、または表面に亀裂が入っている場合です。硬化したゴムは床面への密着度が低下します。また、ゴムの一部が欠けて内部の金属やプラスチックが見えている状態は、床を傷つけるだけでなく、滑り止め効果がゼロに等しいため即交換が必要です。
- 【ガタつき】取り付け部の緩み脚端具はリベットやビスで脚立本体に固定されています。脚立を持ち上げた際に脚端具がグラグラ動く、あるいは回転してしまう場合は、固定具が緩んでいるか、リベットが腐食している可能性があります。
誰でもできる「10秒チェック」導入事例
ベトナムのある日系自動車部品工場では、毎朝の始業前点検に「脚立の足裏チェック」を導入し、転倒事故ゼロを継続しています。その手法は極めてシンプルです。
- Step 1: 脚立を横倒しにする。
- Step 2: 4つの脚端具の裏側を見る。
- Step 3: 指で触り、溝があるか、異物(切粉や小石)が挟まっていないかを確認する。
所要時間はわずか10秒です。この工場では、半年に1回、安全管理者が摩耗具合を一斉点検し、摩耗が見られるものはハセガワの純正パーツを取り寄せて一括交換しています。「壊れたら買い替える」から「部品を交換して使い続ける」へのシフトは、コスト削減だけでなく、作業者の安全意識向上にも寄与しています。
ハセガワ(Hasegawa)が選ばれる理由
ベトナム市場には安価な梯子も多く流通していますが、その多くは「使い捨て」を前提としており、交換用部品が入手できないケースがほとんどです。ハセガワがベトナムのプロフェッショナルに選ばれる理由は、この「アフターサポート」と「品質」にあります。
安全を支える品質と規格
ハセガワの脚立・はしごに採用されている脚端具は、日本の厳しい安全基準(JIS規格、SGマーク基準等)をクリアする設計思想で作られています。
素材には、耐候性・耐摩耗性に優れた特殊配合のゴムやエラストマーを使用。形状も、床面への設置面積を最大化しつつ、滑りの原因となる水や埃を逃がす独自のパターンを採用しています。例えば、人気シリーズ「脚軽(Ashigaru)」の脚端具は、凹凸のある場所でも安定しやすい形状が追求されています。
ベトナムでの部品供給体制
「脚端具だけ欲しいのに、売っていないから脚立ごと買い替える」
これは、企業の経費にとっても、環境(廃棄物削減)にとっても大きな損失です。
ハセガワベトナム(Hasegawa Vietnam)では、本体の販売だけでなく、純正脚端具(Right/Leftなど左右指定があるもの含む)の部品供給を行っています。
ベトナム国内に在庫を持つことで、必要な時に迅速にパーツをお届けできる体制を整えています。1セット(4個入りなど)数千円程度の部品交換で、数万円する脚立の寿命を数年延ばし、何よりプライスレスな人命を守ることができるのです。これは、非常に投資対効果の高いメンテナンスと言えます。
まとめ
脚立・はしごの安全は、地面と接する「脚端具」が握っていると言っても過言ではありません。
- リスク: 摩耗したゴムは、ベトナムの高温多湿・油分のある環境下では致命的なスリップ事故を招く。
- 基準: 溝の深さが1mm以下、ひび割れ、硬化が見られたら即交換。
- 対策: 始業前の「10秒チェック」と、定期的な部品交換サイクルの確立。
- 解決策: ハセガワベトナムなら、交換用パーツの供給が可能。
現場の安全を守るために、まずは今ある脚立を裏返し、その「足元」を確認してみてください。もし摩耗が見られたら、それは事故へのカウントダウンかもしれません。交換部品の手配や、適切なメンテナンス方法については、いつでもハセガワベトナムにご相談ください。