はじめに
本ガイドは、製造・建設・物流の安全衛生責任者や現場リーダーが、はしご・脚立(アルミ/FRP/木製、可搬・固定)の点検・メンテナンスを迷わず運用できるよう設計しました。使用前・週次・月次・年次・イベント後の頻度マトリクスと、良/可/不可の判定基準、チェックシート・タグ・台帳の記録テンプレを提示します。人依存と記録の散逸を防ぎ、不適合の早期発見と是正リードタイムの短縮を実現します。KPI(不適合率/是正までのリードタイム〔LT〕)を可視化し、現場教育にもそのまま使える手順で構成しています。
課題と背景
市場データ(規格・運用の前提)
ベトナムでは規格のTCVNは任意、国家技術規則のQCVNは強制という制度です。はしご・脚立の安全は、TCVN/ISOの技術要求を参照しつつ、企業側で社内基準として頻度・判定・記録を整備するのが実務的です。事故の多くは運用ミスに起因します。代表例は、立て掛け角度が約75°****から外れる、上端の突出が**60cm未満、三点支持が崩れる、過積載、滑りやすい床や風の影響を無視する、などです。加えて、高温多湿・塩害・薬液などの環境は劣化を早めます。沿岸部ではアルミの腐食やボルト固着、化学プラントではFRPの白化・繊維露出が進みやすい。このため、多頻度使用や厳環境では点検間隔を短縮し、年次は有資格者**の総合点検を設定することを推奨します。
リスク提示(見逃しやすい兆候)
現場で見落とされがちなサインは、側桟の歪み・座屈、踏ざんのぐらつき・亀裂、脚ゴムの摩耗・硬化、開き止めやロック機構の不完全係合、伸縮ロープの毛羽立ち・切れ、リベットやボルトの緩みです。素材別には、FRPは白化・繊維露出・表面の粉化、アルミは割れ・腐食孔・異音、木製は腐朽・反り・ささくれが典型です。これらが一つでも確認されたら使用を即時に中止し、隔離して赤タグを付けるし、修理可否を判定します。落下・衝撃・水没・電気接触などのイベント後は必ず追加点検を行い、踏ざんのがたつき、側桟の亀裂、脚ゴムの欠損がある機材は使用禁止・交換を原則とします。角度75°、上端突出60cm以上などの数値基準は、日常点検の「合否ライン」として教育に組み込みましょう。
製品・サービス紹介(運用を回す道具立て)
特長(テンプレと運用設計)
運用を“迷わず・同じ品質で”回すために、テンプレートと手順をセットで提供します。
点検シート:部位(側桟/踏ざん/開き止め・ロック/脚端具・脚ゴム/ロープ・リベット等)ごとに観察ポイントを明記し、判定は良・可・不可の三段階。可=継続使用+要観察、不可=即時隔離・赤タグと運用を紐づけます。写真は最低4枚(正面・側面・ヒンジ部・脚部)を推奨し、症状ワード(例:白化、座屈、緩み、欠損)を記入。1台当たり2〜3分で終えられるチェック量に設計します。
頻度マトリクス:①使用前=当日使う全数 ②週次=週3日以上使用する機材・貸与備品 ③月次=全台の外観・機能 ④年次=有資格者による総合(寸法・がた・締結部) ⑤イベント後=落下・衝撃・浸水・電気接触時は24時間以内に追加点検。結果は緑(使用可)/黄(要監視)/赤(使用禁止)のタグで現場可視化します。
記録の付け方:タグには日付・判定・点検者・次回期日を記載。台帳はシリアルNo./設置場所/使用頻度区分/過去結果/是正履歴/廃棄予定日を持ち、クラウドで写真と紐づけます。ファイル命名例:LAD-000123_2025-07-01_preuse_OK.jpg。QRコードで個体台帳へ直リンクし、保存年限3年、月次レビュー会で是正の遅延を確認します。
導入事例(Before → Action → After)
- 物流センターA:Before/日常点検なし・不具合の発見が作業者まかせ。Action/週次+年次点検、タグ・台帳を導入。After/不適合率を40%低減、是正リードタイム30%短縮、代替手配の待機時間25%短縮。
- 建設会社B:Before/沿岸工区でFRP梯子が早期劣化。Action/塩害エリア専用の点検観点と交換基準を追加。After/破損ゼロを12か月継続、平均寿命を1.5年延伸、不必要な先行交換20%削減。
- 化学工場C:Before/落下・衝撃後の再使用判断が属人的。Action/イベント後24時間以内の追加点検と赤タグ隔離ルールを徹底。After/ヒヤリハット50%低減、使用禁止判断を10分以内で定着、是正着手率100%。
ハセガワの信頼性(長く安全に使うために)
品質管理・認証
ハセガワは「設計適合→材料管理→工程管理→検査→トレーサビリティ」の5層で品質を担保します。設計段階では、EN 131/JIS/ISO 14122-4 などの要求やOSHAの考え方を参照し、使用者+工具+材料を含む想定荷重や滑り抵抗、絶縁・導電性などのCTQ(重要品質特性)を明確化します。材料は供給元証明と受け入れ検査でロット適合を確認し、腐食・薬液環境に配慮した表面処理やFRP樹脂系の選択を行います。
工程では、締結トルク・接着条件・リベットかしめ深さ等の作業標準を整備し、治具点検と作業者教育を定期実施。検査は受け入れ→工程内→出荷の三層で、全数外観・寸法確認に加え、抜き取りによる機能・耐久試験(踏ざんの抜け・ヒンジ開閉・脚端具の滑り抵抗など)を実施します。FRPは白化・繊維露出の有無、アルミは座屈・割れ・腐食孔の有無を重点確認します。
トレーサビリティはシリアルNo./製造ロット/図面版数/検査記録を紐づけ、台帳と連動。現場の点検タグとも整合し、不適合の発生から隔離・是正・再判定までの履歴を一元化します。交換部品は脚ゴム・端具・開き止め・ロープ等の純正パーツを型式別に用意し、パーツリスト/交換手順書/注意事項を同梱。予防交換は使用頻度・環境に応じて計画化し、年次点検と併せて実施することでダウンタイム最小化を図ります。
特注対応・サポート体制
使用環境や作業内容に合わせて、素材選定×寸法×付属機構を最適化します。例えば、電気作業や薬液飛散の恐れがある現場にはFRP、頻繁な持ち運びには軽量なアルミ、塩害環境には耐食性表面処理や部材選択を提案。非標準寸法・踏ざんピッチ・有効幅・手摺・キャスター・脚調整機構などのオプションも組み合わせ、導入前に現場トライアル(PoC)で使い勝手と安全性を検証します。
導入プロセスは、①要件ヒアリング ②現場サーベイ ③仕様提案/リスクアセスメント ④試作・検証 ⑤量産・教育の5ステップ。教育は座学(約60〜90分)+実機演習(約30分)****を基本に、**判定早見表/チェックシート/タグ/台帳**をそのまま使える形で配布します。導入後は**30日・90日の定着フォロー、年次点検の同席や写真レビューなどの運用支援メニューも用意。これにより、頻度×判定×記録**の型が現場で無理なく回り、設備停止や事故リスクを継続的に低減できます。
まとめ
本稿の要点は、はしごの安全を「頻度×判定×記録」で標準化することです。まず資産を棚卸しし、使用前・週次・月次・年次・イベント後の頻度マトリクスを社内決定。判定早見表で良/可/不可を統一し、タグと台帳で履歴を可視化。KPIは不適合率、是正までのリードタイム(LT)、交換周期の遵守率を月次でレビューします。導入時はハセガワの点検シートとテンプレを活用し、疑問や現場適用はお気軽にご相談ください。参照規格や公的資料は末尾リンクから確認できます。運用定着後は年次の有資格者点検と合わせ、予防交換を計画化することで、事故リスクと停止時間を継続的に低減できます。写真とQRの連携でトレーサビリティを強化できます。
はしご 点検チェックリスト表: Hashigo 8.34.39