はじめに
ベトナムの製造・建設・物流現場では、はしごや脚立の保管・運搬は後回しにされがちですが、日常の扱い方次第で耐用年数は最大3倍に延び、事故リスクも大幅に減少します。直射日光や湿気による劣化、運搬中の衝突や落下などは、適切な保管環境や運搬方法でほぼ防止可能です。本記事では、現場担当者が実践しやすい「長寿命化の具体策」と「実際の失敗例と改善策」を紹介します。
保管の落とし穴と最適解
屋外保管が招く素材別劣化
適切な保管措置を講じず屋外に放置されたはしご・脚立は、雨水、直射日光、温度変化の影響で素材ごとに異なる劣化が急速に進行します。アルミは酸化白錆が表面に発生し、腐食により継ぎ手の緩みや強度低下を招きます。FRP(繊維強化プラスチック)は紫外線の長期照射で樹脂が脆化し、微細なひび割れや繊維露出が進行します。鉄製は錆の発生が早く、重量増加だけでなく構造強度の著しい低下を引き起こします。これらの劣化は、使用中のバランス崩れや破損など重大事故の直接的原因となります。
出典: 厚生労働省 職場のあんぜんサイト
室内・屋根下保管の環境条件
理想的な保管環境は湿度40〜60%、温度0〜40℃を維持できる室内や屋根下です。これは結露による金属部の腐食や樹脂部の劣化を防ぎ、長期的な性能保持につながります。直射日光や雨水の侵入を防ぐため、遮光性・防水性のある屋根や壁が必要です。通気性確保も重要で、湿気がこもると滑り止めゴムや接着部の早期劣化を招きます。保管時は脚部が均等に接地するよう調整し、ラックや吊り下げ収納を活用して歪みや過剰な荷重を防ぎます。これにより、構造安定性と耐用年数の両立が可能となります。
運搬時の安全と効率化
事故データに見る運搬リスク
「はしご等」は墜落・転落災害の主因であり、平成23〜27年平均で毎年約30人の死亡が発生しています。傷病名では骨折が約68.6%と高率で、重篤化しやすいのが特徴です。発生状況では、脚立は「上での作業中」70.4%、「降りる際」19.4%、「上る際」7.9%。典型例は、荷物を持ったままの昇降によるバランス喪失からの転落です。運搬・取り回し時は把持点減少や視界制限により、接触や二次災害のリスクが増大します。両手を空けた3点支持の徹底、長尺物は2人以上での運搬、台車・ショルダーベルト・保護カバー等の補助具活用を標準化することが有効です。
負担軽減&損傷防止アイテム
サイドカバーや天板クッションは、運搬・保管中の脚立や周囲設備の損傷防止に有効です。適度な硬さと衝撃吸収性を備え、装着したまま開閉可能な製品も多く、作業効率を損ないません。台車一体型脚立は長距離運搬時の身体的負担を軽減し、腰や肩への負担を減らします。ショルダーベルトは両手を自由に使えるため3点支持を確保しつつ、安全に移動できます。補助アイテムを適切に組み合わせることで、安全性と作業効率を同時に向上できます。
劣化を防ぐ5つの実践テク
- 保管場所は直射日光・雨水回避:紫外線や水分は金属腐食・樹脂劣化の主要因。必ず屋内や屋根下に保管。
- 月1回の滑り止め・接合部点検:ゴム摩耗、ネジ緩み、ヒビや腐食を定期確認。異常は即交換。
- 運搬時は保護カバー装着:接触損傷を防ぎ、製品も保護。
- 長尺は2人以上で運搬:一人作業はバランス崩れや衝突危険大。必ず声掛けと役割分担を実施。
- 車載時は固定ベルト必須:走行中の振動や急停止による転倒・変形を防止。ベルト摩耗も要確認。
現場失敗例と改善策
屋外で長期間直置きされた脚立は、脚部や接合部の金属が錆びて強度が低下し、使用中に脚部が折れて転倒する事故が発生しました。また、運搬時に固定ベルトを使用せず1人で持ち運んだ結果、狭い通路で壁や製品に接触し、傷や破損を生じた事例もあります。改善策として、保管ルールの明文化(屋内ラック保管徹底、屋外は防水カバー必須)や、サイドカバー・天板クッション・ショルダーベルトなど専用運搬具の標準装備化が有効です。これにより、寿命延長と事故防止を同時に達成できます。
ハセガワの強みとサポート
ハセガワはJIS規格、ISO9001、TCVNなどに適合した厳格な品質検査体制を確立し、製品の強度・耐久性・安全性を出荷前に徹底確認しています。現場事故予防のため「安全運搬講習会」を実施し、正しい持ち運び・保管方法を教育。長尺・軽量化モデル、耐薬品仕様など現場条件に応じた特注製作にも対応します。これらにより、顧客の作業効率向上と安全確保を両立します。
出典: 長谷川工業公式 サポートページ
まとめ
はしごや脚立の保管・運搬は、安全性と寿命を左右する重要な管理行為です。直射日光や湿気を避けた保管、保護具・補助器具の活用、定期点検と清掃など、小さな取り組みが重大事故防止とコスト削減につながります。現場全体でルールを共有・徹底することが、作業効率と安全性を同時に高める最も確実な方法です。