伸縮はしご(テレスコピック)が動かない!スムーズさを保つ掃除術

はじめに

ベトナムの建設現場や工場で、日々過酷な環境に晒されている「伸縮はしご(テレスコピックラダー)」。コンパクトに収納できる利便性から、電気工事や内装仕上げの現場で重宝されています。しかし、購入から半年も経つと「縮まない」「伸ばすときに引っかかる」「ロックが固い」といったトラブルに直面することはありませんか?

「動きが悪いから」と、手元にある防錆潤滑剤(油性スプレー)を吹きかけてしまう——実は、これがはしごの寿命を縮める最大の原因です。ベトナム特有の湿気と微細な粉塵が舞う現場において、誤ったメンテナンスは製品を「危険な道具」へと変えてしまいます。

本記事では、ハセガワベトナム(Hasegawa Vietnam)の品質管理基準に基づき、伸縮はしごの正しいメンテナンス方法を解説します。なぜ「油」が厳禁なのか、そしてプロが愛用する「シリコンスプレー」の科学的優位性について、具体的なデータを交えて紹介します。

なぜ伸縮はしごは「動かなくなる」のか?

ベトナムの現場環境と構造的リスク

伸縮はしごがスムーズに伸縮するためには、パイプとパイプの間に精密な「クリアランス(隙間)」が必要です。しかし、ベトナムの建設現場は、この隙間にとって非常に過酷な環境です。

  • 微細粉塵の侵入: セメントや石膏ボードを切断する際に発生する粉塵の平均粒子径は、10µm〜20µm(マイクロメートル) です。これは髪の毛の太さ(約80µm)の数分の一という微細さであり、はしごのわずかな隙間にも容易に侵入します。
  • 油性潤滑剤の「ヘドロ化」: 一般的な防錆潤滑剤(石油系オイル)やグリスは粘度が高く、これらの粉塵を強力に吸着します。結果として、内部でオイルと粉塵が混ざり合い、黒く粘り気のある「ヘドロ(研磨剤のような混合物)」が生成されます。これがパイプ内部で摩擦抵抗を増大させ、固着(Seize)を引き起こすのです。

無理な操作が招く「ロック不全」のリスク

動きが悪くなったはしごを無理やり押し込んだり、足で蹴って縮めようとしたりすることは絶対に避けてください。内部のプラスチック部品やロックピンが変形し、使用中に突然はしごが縮む「ロック不全」につながる恐れがあります。

米国の労働統計局(BLS)のデータによると、2020年には161件の致命的な労働災害がはしごに関連しており、その多くが建設・保守作業中に発生しています。また、はしごに関連する事故の約43%が、過去10年間で致命的な転落につながっています。メンテナンス不良による機器の不具合は、これらの事故リスクを劇的に高める要因の一つです。

【実践編】スムーズさを保つメンテナンス手順

ここでは、誤った習慣を断ち切り、はしご本来の性能を取り戻すための正しい手順を紹介します。

準備するもの(NGアイテムリスト付き)

最も重要なのは「何を使わないか」です。

  • 【OK】推奨アイテム:
    • シリコンスプレー(無溶剤タイプ): プラスチックやゴムを侵さず、乾燥後にさらっとした被膜を作ります。耐熱温度は約180〜200℃と高く、ベトナムの高温環境でも変質しにくい特性があります。
    • エアーダスター(またはコンプレッサー): 隙間のゴミを吹き飛ばします。
    • 乾いた清潔なウエス: 汚れの拭き取り用。
  • 【NG】絶対禁止アイテム:
    • 油性潤滑剤(CRC 5-56、WD-40の通常版など): ベトつきが残り、ホコリを吸着します。
    • マシン油・グリス: 粘度が高すぎ、内部で固まります。

3ステップ掃除術(Before → Action → After)

  1. Step 1:エアーブロー(粉塵除去) はしごを全伸長させた状態で、パイプの継ぎ目(樹脂部品周辺)にエアーを吹き付けます。内部に入り込んだ10µm級の微細な粉塵を外に追い出すことが目的です。
  2. Step 2:乾拭き(酸化被膜除去) アルミパイプの表面が黒ずんでいる場合、それは汚れとアルミの酸化物が混ざったものです。乾いたウエスでしっかりと拭き取ります。水洗いは内部の機構を錆びさせる原因になるため、基本的には避けてください。
  3. Step 3:シリコン塗布と「拭き取り」 シリコンスプレーをパイプの摺動部(重なる部分)に薄くスプレーします。ここで重要なのは、「スプレーした後に必ず乾拭きする」ことです。 シリコンは極薄い被膜があれば十分な潤滑効果(摩擦係数の低減)を発揮します。液だれするほど残っていると、逆に汚れを呼ぶ原因になります。シリコン被膜形成後のアルミ同士の摩擦係数は、乾燥状態で劇的に改善され、スムーズな動きが復活します。

ハセガワの品質と長寿命の秘密

精密な「クリアランス」設計と耐久性

なぜハセガワの伸縮はしごは、これほどメンテナンスに気を使う必要があるのでしょうか? それは、ガタつきを極限まで抑えた「精密な設計」だからです。 Hasegawa Vietnam(2013年12月2日設立)が製造する製品は、日本やアメリカの厳しい市場向けに輸出されています。これらの市場では、安全性に対する妥協は許されません。

ハセガワでは、製品開発段階で 10万回 を超える繰り返し昇降試験を実施しています。これは、プロの職人が 週5日1日100回 使用したとしても、長期間耐えうる設計であることを証明するためのものです。この耐久性を維持するためには、設計通りの摩擦抵抗を保つこと、つまり正しいメンテナンスが不可欠なのです。

「乗ればわかる、頼もしさ」を維持するために

2024年12月に発表された新メッセージ「乗ればわかる、頼もしさ。」は、数値データだけでは測れない「感覚的な安心感」を重視するハセガワの哲学を表しています。 メンテナンスが行き届いたハセガワの脚立やはしごは、高所作業特有の「揺れ」や「きしみ」を最小限に抑えます。逆に言えば、誤ったメンテナンスで動きが悪くなったはしごを使うことは、この「頼もしさ」を自ら放棄し、不安と共に作業することに他なりません。

まとめ

伸縮はしごの寿命を延ばし、安全に使用するためのポイントは以下の3点です。

  1. 脱・油性オイル: 粘着性の高い油やグリスは、粉塵を吸着して故障の原因となります。絶対に使用しないでください。
  2. シリコンスプレーの活用: 非粘着性で耐熱性のあるシリコンスプレーを使用し、塗布後は必ず拭き取って薄い被膜を作りましょう。
  3. 使用後の習慣: 現場の粉塵(10µm級の粒子)を持ち越さないよう、格納前にエアーブローと乾拭きを行う習慣をつけてください。

Hasegawa Vietnamは、ダナン工場から世界基準の安全をお届けしています。もし、メンテナンスを行っても動きが改善しない、あるいは部品の破損が見られる場合は、無理に分解せず、正規のサポート窓口までご相談ください。安全は、正しい道具の手入れから始まります。